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全音ピース愛好部 部室

第2回 秘曲のたのしい見つけ方


■こっそりと、ピース

部長: さぁ、今回もふるってまいりましょう。
書記: 部長、まずはお便りのご紹介です。
部長: おっ、お便りがきたの?
書記: ええ。わたし、この部室ができたことがうれしくて、ほうぼうにふれ回ったんです。そうしたら、まぁ友人の一人ですが、こっそりとね、メールくれたんです。ピースにまつわるお話の。
部長: おや、いいですね。さっそくご紹介を。
書記: はい。ペンネーム「キノコ大好きっ子」さんからです。
部長: 大好きっ子・・・・・・
書記: 「部長さん、書記さん、こんにちは」
部長: こんにちは〜
書記: 「僕はお二人と同世代のサラリーマンです」
部長: 男性なんですね?
書記: 「僕のピース・デビューは、高校3年生と、遅いほうだと思います。5歳から中3までピアノは習っていましたが、途中でやめました」
部長: なるほどねぇ。ありがちです。
書記: 「ピアノを再開したのが高校3年生。親から練習しろって言われるのが苦痛でやめたはずなのに、気付いたら、大学受験勉強をやりたくなくて、逃避願望からピアノを弾き始めていたんです」
部長: 一風変わったパターンですねぇ。
書記: 「今度は『勉強しなさい』と親がうるさい。なので、親が留守の間にピアノを弾くのです。そうやって、こっそり親の目を盗んで買い込んでいたのが、ピースでした」
部長: 親の目を盗んでのピース! そう来ましたか! なかなか穏やかではないですね。
書記: ピースなら場所も取らないし目立たない。小遣いでも買えるんですから「親の目を盗」むアイテムとしてもピッタリ。
部長: そんなスリリングなピース需要があったなんて。
書記: 「そんな僕は、高校3年までショパンの名前もろくに知りませんでした。しかし、初めて買ったピースが『幻想即興曲』」
部長: そうそう!幻想即興曲ピースで買った人多いよ!
書記: 「そしてリストの『ラ・カンパネラ』。この2冊のピースは相当使い込みました」
部長: これはまた。意欲的ですねぇ!使い込んだということは、前回の私の「荒野のバラ」状態で、背表紙バラバラかもね。
書記: そしてなんと「キノコ大好きっこ」さんは、その後ピアノを自己流で弾きまくったそうで、「ピースにはショパンの『バラード』がありませんでした。それが、曲集を購入するきっかけになりました」と。
部長: へぇ! すごいですね。曲集に進むきっかけが「ピースになかったから」って。そんな動機付け、あるのね。
書記: わたしも驚きました。いい感じにラインナップに隙間があるんですよー。そこがまた、愛すべきピースです。
部長: もっとお便りないの?
書記: 絶賛募集中です。このホームページの「今月のプレゼント」の応募フォームには、
エピソードを書き込める欄があるんです。ぜひそこに部室宛のお便りも書いてほしいですね。ご紹介を「してくれてもいいよ」という方は、ぜひペンネームもお書き添え下さい。
部長: 知りたい知りたい! みんなのピース体験。ぜひ、お待ちしております!

■人気ベスト10入りはこの曲だ!

書記: さて、本日のメインテーマです。部長がかねがね、熱くトークしたいとおっしゃっていた話題でいきましょう。
部長: ・・・・・・というと、人気曲ランキング?!
書記: 当たりです。
部長: おお。500番を超えるピース作品のなかから、栄えあるベスト・テン入りを果たしているのは?!
書記: まぁ、だいたいどんなあたりがヒットしているのか、十数曲、全音さんに取材して教えていただきました。お話によれば・・・・・・
部長: ちょ、ちょっとまって! 当てたい。愛好部長として、ぜひここは人気曲を当てたい。
書記: どうぞ。
部長: そうだなぁ。いやね、けっこうこのピース一覧表の順番って、大事だと思う。最初の1番、2番がベートーヴェンじゃない。「月光の曲」と「エリーゼのために」。この二つはやっぱり王道的に人気なんじゃない?
書記: ・・・・・・さすが部長!
部長: 当たり?
書記: はい。教えていただいた10曲に見事ランクイン。なんでも、「エリーゼのために」は堂々の1位というお話ですよ!
部長: おお。となると、やっぱり4番のモーツァルトの「トルコマーチ」。それに親の世代が大好きな16番の「乙女の祈り」だって入っているであろう。
書記: 手堅いですねぇ。入ってます!
部長: やはり(ニヤリ)。えーあと何だろう。私の好きなランゲも入れたいところだけど・・・・・・いや、それより、「愛の夢」だな。リストの「愛の夢 第3番」!
書記: ・・・部長。私、ちょっと部長が怖くなってきました。当たりです。
部長: 本当?!

書記: リストって難しいじゃないですか。だからなかなか曲集に手が届かない。でも「愛の夢」ってやっぱりみんなの憧れだし、ピースなら・・・って買うよね。
部長: ここでしか、ピースでしか、しかも「愛の夢3番」でしか、リストを弾いてないっていうパターンはあると思う。
書記: ちなみに私も「愛の夢」のピース持ってます。これ、なぜか高校生の頃、同級生でピアノ習ってた男子がくれたんだよね。実話だよ。

部長: えーなにその淡い青春の思い出。もしかして恋じゃなぁい?
書記: いや。それないね(キッパリ)。絶対ない。もしそういう雰囲気があったら、わかるよ。それに、その時一緒にくれたピースがもう一つあったんだけど、なぜかヴェルディの「凱旋行進曲」。144番。
部長: ?!
書記: でしょ? きっとさ、持て余しちゃって、いらなかったんだよ。だからくれたんだよ。
部長: えええ。いらないなんて。
書記: 彼は親の目を盗み切れず、受験勉強せねばならなかったのか・・・・・・。とにかく今でもちゃんと私のピース・コレクションにありますからね。大事にしてます。なくなりません、ピース。
部長: その他の人気ランクイン曲教えてくれる?
書記: 「なるほど」という名曲ばかり。24番「きらきら星変奏曲」、135番「夜想曲」、それに146番「ソナタ悲愴」などですね。35番「小犬のワルツ」も!
部長: ほほう。発表会でもよく聴くラインナップだなぁ。

■勝手に心配してみる

部長: 人気曲はもちろん気になるんですが、逆に、「この曲は大丈夫か?!」っていう曲についても、勝手に心配してみたい。
書記: といいますと?
部長: たとえばね。私はピース一覧表を眺めるのが趣味と言ってもいい人間ですが、今だに見落としていた曲を見つけたりして、驚くわけですよ。こんなに見てるのに。 
書記: 部長が見落としてるとなると、もしや多くの人が、その存在に気付いていないのでは・・・と心配になる曲があるということですね?
部長: そのとおり。それが実際どのくらい売れてるのかはともかく、勝手に心配してるんです。
書記: たとえば?
部長: スピンドラー作曲、「喇叺手の小夜曲」。

書記: え??? なになに? 「らっぱしゅの・・・」? 何番?!
部長: ほら。書記も見落としてたでしょう。111番、スピンドラー作曲。
書記: ス・・・・・・知らなかった。
部長: あんまり心配になったので、ちょっと楽譜買って来ましたよ。
書記: お、おおおお。どんな曲でしょう。

♪スピンドラー「喇叺手の小夜曲」

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部長: ややや。これはまことに元気のいい、なかなか楽しいファンファーレじゃないですか。
書記: これ、タイトル、ようは「トランペット吹きのセレナーデ」ってことですよね。
部長: ・・・・・・ま、そうなんだけど。
書記: あ、いえ、漢字がこんだけ並ぶ雰囲気、私好きですよ(焦)。ええと、他に、勝手にご心配な曲は?
部長: ウンラート作曲、「カール王行進曲」。
書記: か、カール王? ええと・・・・・・何番?
部長: やっぱり見落とされてたか・・・・・・182番。
書記: あっ 本当だ。なんだろう。一覧表の中のカール王、意外と目立たない。王なのに。
部長: でしょう? あまりに不思議でこちらも入手。
書記: 段取りいいですねぇ。

♪ウンラート作曲「カール王行進曲」

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書記: おぉ。これもまた勇ましいことで。さっきの「喇叺手の小夜曲」といい、なにかこう、吹奏楽的で行進曲風のものを心配される傾向があるんですか? 部長は。
部長: や、たまたまです。一覧表をですね、こう縦に眺めていくだけでなく、目を横に走らせて行くと、こうした気になる曲に出会えるってことを、最近発見した。
書記: はぁ・・・・・・なるほど。
部長: でも、私が心配しているのは、見ず知らずのスピンドラーやウンラートだけじゃありません。
書記: といいますと?
部長: 私がひそかに敬愛しているハイドン。彼の中にも心配な曲が。
書記: ええー。ハイドンは大丈夫でしょう。だって、パパ・ハイドンですよ? 「交響曲の父」ですよ、大御所ですからピースだって名曲揃いでしょう。
部長: じゃああなた、訊きますケド、ピース番号45番の「セレナーデ」と聞いて、ピンとくる? この曲アレでしょ? って口ずさめる??
書記: や・・・・・・そう言われてみると、なかなか。
部長: そこなんですよ。「セレナーデ」っていわれても、ですよ。古いピースの一覧表はただ「セレナーデ」って書いてある。最近のものは小さく(「弦楽四重奏第17番」より)って括弧書きが付きました。
書記: いや、それでもなかなかピンときません。
部長: そう思ってね、持ってきましたよ。ハイドンの「セレナーデ」。

♪ハイドン「セレナーデ」

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書記: あ、ああ!! ああ!! この曲かぁ!
部長: 知ってますよねぇ? 確かに書記の言うとおり、名曲なんです。でもまさかこれがピースにあったとは、じゃない?
書記: いや、この曲ねぇ。最近も頻繁によく聴くんですよ。2355で。
部長: にーさんごーごー? なにそれ。
書記: しらないですか? 夜11:55にNHKのEテレを見てくださいよ。毎晩日付けが変わる5分前に、ちょっとしたアートっぽい映像をいくつか見せてくれるNHKの番組です。その中でいつもかかるんですよ。いやぁ〜、これピースで弾けるとはなぁ!うれしいなぁ!
部長: コーフンしてるね・・・・・・
書記: 「2355」好きなんですよ。ぜひ見て下さい。はっ・・・もしや・・・
部長: どうした?
書記: あのね、「2355」にトビーっていう、トビハゼが出てくるんでけどっ
部長: トビー? 番組見てない人間にはなんのことやら・・・
書記: まぁその可愛いトビハゼの水槽が映ったときにかかるのが、確か、ブラームスのワルツだったように思うんですが、これってもしやピース番号162番「ワルツ」だったりとか・・・
部長: ちょっとまって。あ、あるよ。持ってる。これのこと?
書記: わっ! これまた分厚いピース!
部長: 18頁ある。しかも、16曲もワルツ入ってる・・・・・・すでに「ピース」の限界を超えんとしている。
書記: あったっ!!! これだっ!! 15番のワルツ。これですよ、トビーの曲はっ
部長: だから、番組見てない人に、「トビーの曲」とかそんなにコーフンされても・・・って、あ、この曲かぁ! 有名だよね。

♪ブラームス「ワルツop.39」(トビーの曲 by 書記)

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書記: いっやー・・・まさかこれ、ピースで弾けるとはなぁ。灯台下暗しとはこのこと。感無量!
部長: よかったね
書記: 部長もいじけてないで、「2355」見て下さいよ。
部長: わかったっ
書記: NHKとピース、親和性高いなぁ。
部長: あ、私も勝手にそう思ってたよ! ピースの一覧表見てるとね、なんか「名曲アルバム」のあの世界観、思い出すもの。
書記: ですね。もしや、NHKのスタッフさんもピース一覧表見てるかなぁ。
部長: それはどうかな。
書記: ピースと親和性高いといえば、日本でも人気のピアニスト、ルイサダさんのアルバム。これまたNHKでレッスン番組もなさってましたけど、たまたま今年(2012年)発売のCDもピースと親和性高いですよ。「エリーゼのために」とか「主よ、人の望みの喜びよ」(バッハ=ヘス)とか、「月光」とか「トルコ行進曲」とか目白押しね。
部長: もしや。 ピース一覧表見たかな。
書記: ないと思います(即答)。 ま、名曲を入れた、っていう。
部長: 送って差し上げようか。一覧表。パリまで。
書記: いや。日本語だしね。
部長: 原語のピース一覧表も欲しいね! なんて。
書記: グローバルに推しますねぇ。まぁ、せっかくですので、今後もピースと親和性の高い人なり活動なりを勝手に発見し次第、ご紹介申し上げます。
部長: たのむ。いやぁ、しかし。「心配」してみると、思わぬ発見があったりするね。
書記: ですね。私もたくさん「心配」してみよっと。わくわく
部長: うれしそうだね。
書記: いえ。心配してるんです♪
部長: もしや。 ピース一覧表見たかな。

第2回 おわり

*対談後記*
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。みなさんも、どうぞ「心配」な曲を発見してみてください。実際に楽譜を手に取ってみたら、思わぬ一品を掘り当ててしまうかもしれません。

部員紹介

部長(ぶちょう)

・1975年(昭和50年)生まれ 埼玉県出身
・全音ピース愛好歴:30年
・好きな全音ピース:No.100 リヒナー「勿忘草」
・趣味:ピース一覧表観察
・好きな言葉:ピース
・私にとっての全音ピースとは:恋人


書記(しょき)

・1974年(昭和49年)生まれ。北海道育ち
・全音ピース愛好暦:30年
・好きな全音ピース:No.18 カリニコフ「悲歌」
・趣味:ピース「難易度」の再検討(レベルAとBのみ)
・好きな言葉:断片
・私にとっての全音ピースとは:夢と希望


プロフィール
飯田有抄(いいだ ありさ)
音楽ライター、英語翻訳。1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒、同大学院音楽研究科修士課程修了。マッコーリー大学院翻訳通訳修了。音楽ライターとして『CDジャーナル』『ムジカノーヴァ』『ぴあクラシック』等の音楽誌、ローランド社の『RET’S PRESS』、CD、楽譜、演奏会プログラムノートなどを執筆するほか、全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)のウェブサイトにて記事を連載。著書に『あなたがピアノを続けるべき11の理由』(ヤマハ・ミュージック・メディア)。全音楽譜出版社、音楽之友社の出版譜等の作曲者解説の英語訳を行う。

前島美保(まえしま みほ)
日本音楽史研究。1975年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒、同大学院音楽研究科博士課程修了。2012年「十八世紀上方歌舞伎音楽の研究―囃子方を中心に―」で博士号を取得。東京藝術大学音楽学部楽理科教育研究助手、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター非常勤講師などを勤めるかたわら、ブルグミュラー研究に従事。「ブルクミュラーの生涯と日本『ブルク』事始」(2006年、『ムジカノーヴァ』9月号)など。ぶるぐ協会主宰。