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全音ピアノピース・ファンに贈る オススメの1冊

第3回 No.77 アベ・マリア(グノー)


 みなさん、幸せにピース弾いてますか?
 ピースを何冊かコレクションしてくると、「今日はどの一曲を弾こうかな」と、マイピースたちの中から選ぶ楽しみが出てきます。私も愛好部を立ち上げてから、かなりコレクションがたまってきました。すぐに弾けるもの、ちょっと練習が必要なもの、逆立ちしたって弾けないもの(←鑑賞用)、いろいろです。最近開発したピース遊びは、まずマイピースをシャッフルしまして、つぎに目を閉じてエイッと引き当てたものを弾く、というもの。なんとも、原始的な占いのようなピース選択術です。

 そうやって選んだ中で、こちらでオススメしたい一曲にぶち当たりました!そんなテキトーに選んだものオススメするなよ、と怒らないでいただきたい。むしろお告げのように引き当てられた、素敵なピースなんですからっ。

 「No.77 アベマリア Charles Fancois Gounod」

 そう。「グノーのアベマリア」として有名な曲です。
 出だしのメロディーを聴けば誰もが知っているでしょう。

知られる理由その1:よくクリスマス・シーズンになると、なぜかクリスマス・ソング的に街中でも流れる。
知られる理由その2:この曲は、バッハが作曲した「平均律クラヴィーア曲集」第1番プレリュードに対して、19世紀フランスの作曲家シャルル・フランソワ・グノーが声楽パートを付けた歌曲として有名。そんなわけで、人気のある曲なのです。

 土台がバッハのプレリュードとあって、ハーモニーの移ろいが美しいのは納得。それに付けられたグノーの歌のメロディーは、息の長いフレージング、魅惑的な音の飛躍があって、とてもロマンティック。
 これはもう、演奏してみたいじゃないですか。でも、バッハの書いた楽譜を見ながら弾き語りするのは、やっぱりちょっと大変。「平均律」の練習だけで終わってしまいそう。と、そこにきて、このピースですよ! ピースのアレンジは、右手でメロディー、左手で伴奏。バッハの原曲は16分音符が並んでいるけれど、ピースの左手は8分音符ばかり! それでいて、原曲の和声感の美しさをまったく損なうことなく、むしろ独特な静けさと穏やかさに満たされた、かなり素敵な編曲となっています。これはゼッタイにオススメです。しかも、「難易度」はなんとA! この美しさで! 信じられない。お得感あります。

 練習時間もストレスもいらない、心満たされるこの一曲は、忙しいオトナのあなたにピッタリ。ピースと幸せなひとときを、ぜひお過ごしあれ。

第3回 おわり

プロフィール
飯田有抄(いいだ ありさ)
音楽ライター、英語翻訳。1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒、同大学院音楽研究科修士課程修了。マッコーリー大学院翻訳通訳修了。音楽ライターとして『CDジャーナル』『ムジカノーヴァ』『ぴあクラシック』等の音楽誌、ローランド社の『RET’S PRESS』、CD、楽譜、演奏会プログラムノートなどを執筆するほか、全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)のウェブサイトにて記事を連載。著書に『あなたがピアノを続けるべき11の理由』(ヤマハ・ミュージック・メディア)。全音楽譜出版社、音楽之友社の出版譜等の作曲者解説の英語訳を行う。